ダイレクトマーケティング。
「機械仕掛けの愛」が名作なので、お前らも読もう。
作品紹介
一話完結(たまに前後編の2話)の作品。
人型のロボットがナチュラルに人類の中に存在している世界。
高度化しまるで人のようにふるまうロボットが人類にどう関わってくるのか。
命無き機械に命を見出す人の愛と、感情らしきものを持つ機械から人への愛が描かれた作品。
ここからは第五話「罪と罰の匣」についてネタバレありで書いていくので、未読の方は現状無料で読めるので、ぜひ一通り読んでからみてみてね。
個人的に一番好きだった「罪と罰の匣(ハコ)」について語る。
第五話、罪と罰の匣のあらすじ
警察である「ガクさん」と共に行動する、正義感の強い「ボノボ」というロボットがいた。
人間味あふれるロボットで、本来一瞬でインプットできる本の内容をじっくり目で見て、そしてその内容を「ククク」と笑いながら楽しむようなロボットだ。
ロボットであるが故の身体性能を活かし、犯罪者を裁いていくボノボ。
ただ、その人間味……「個人の正義」を持ってしまったボノボは、法の下に動く警察組織の中で、理由はあるものの「犯罪」に分類される紙幣偽造を行い、罰を受ける。
罰は「虫型ロボットにされ、人格(ロボ格?)はそのままに浜辺の満ち引きする波の近くに打ち捨てられる」というものだ。そこから離れることはできず、寄せる波から逃げ、引く波を追うことしかできなくなる。
そんな虫の群れをガクさんは眺め、ボノボが好きだった本を、虫の近くの浜辺に置く。
人間味あふれる、ボノボというキャラクター
人間の愚かさがよく描かれた小説です。
中略
でもどんなに愚かだろうと、
私は人間が好きですけどね。
「罪と罰」を読みながら語るボノボ。このセリフからもわかる通り、ボノボは人類を愛している。
例えが適切化はわからないけど、「バカ犬」と言葉では馬鹿にしながら、そのバカっぷりすらもかわいく思っている愛犬家のような感じ方だろう。
そして、人類を愛しているからこそ、罪を犯した。
紙幣偽造という罪だ。
それじゃあ、その紙幣偽造で何をしたか? 金のない人に、それを渡していた。
一般人を傷つけることが出来ない(と思われる)ロボットは、義賊のように金持ちから富を奪い貧乏人に分配するということが出来ないため、そういった行動に及んだと思われる。
人類の幸福をできる限り平均的なものにしようという、「人類を愛した」が故の行動だろう。
ガクさんが紙幣を偽造して配ったということに対して怒った時も、ボノボは
お金持ちは少し困るかもしれませんね。
でも貧しい人たちは大喜びです。
たくさんの命も救うことができます。
と、あくまでも人類に対する「命は同じ価値である(が故に多少の人が困っても、多数を救えるならよし)」という正義の形を説明する。
「犯罪だから悪い」という思考では、一生理解できない行動だ。
法律は「こういう行動が犯罪なんだよ」と決めているだけで、その法律を破ることに善悪はない。
避けられない不幸を回避するために、執行猶予になる殺人もあるが、ボノボの行動原理は、これとかなり似通っている。
自分を犠牲にしてでも、自分の思う善なる行動を取り、そのために死ぬことすらいとわない。
たしかに法律を犯しました。
罰は受けるつもりです。
でも不正義を行ったとは思っていません。
ボノボのこの言葉通り、「正義か否か」と「犯罪化否か」は全く関係がない。
「機械的に」犯罪は悪い物と判断する「ロボット」には、絶対にできない行動だ。
だから、ボノボに人間味を感じるんだろう。
そしてその行動に、深く共感できる。
ガクさんの言葉から見る、キカイとヒトの違い
ロボットは無感情という常識と対比させるためか、ガクさんは感情豊かに描かれている。
特に犯罪への怒りは最初から最後まで一貫している。
その犯罪者が、ロボットだとしてもだ。
物語の初めに
私には愛すべき部下がいた。
という台詞がある。
愛の反対は無関心という言葉もあるが、ガクさんのボノボに対する態度は、間違いなく「無関心」の対極にあるものだろう。
自分なりの正義を持ち行動する機械。
そしてそこに感情を抱くヒト。
そこに、機械と人間との違いなど、無いように思える。
この作品の本質は、人間同士の愛なんだろうな、と感じた。
……終わりにもある、ガクさんの
私には愛すべき部下がいた。
という台詞が、ロボと人との垣根などない事をしめしているし、最後のコマの涙を見せるガクさんに、おもわずウルっと来た。
まとめ 一話完結なのに、深く感情をゆすぶられる名作
憂鬱展開な話もありますが、根本は「愛」を描いている素晴らしい作品です。
普通の人はもちろんのこと、ぼくたちひきこもりたい人類の心にも響くであろう物語。
マンガワンで期間限定無料で読めるので読んでみてね。
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